或る日々の話-東海道新幹線の場合- 4
小さな影が、正面にいる大きな影に走り寄って、抱きついた。
大きな影は、愛しそうに己の腕の中の影を撫で、抱きしめる。
「よかったのう」
二つの影から少し離れた場所にいる人影がそう言うと、大きな影のほうがそちらを向いて一礼をした。
人影が首を横に振る。
「客を目的地に連れて行くのはわしらの役目、当然のことをしたまでじゃ。しかし、あまりあやつを混乱させるでない。わしと違って、まだまだ子供じゃからな」
人影の言葉に小さな影も振り向くと、屈託なく笑った。
――ありがとう。